今、話題になりつつある全日本選手権のダイジェストDVD『ザ・ファイナル』を作るに至った経緯を書いたみたい。
発端は、昨年の世界選手権ドルトムント大会の帰りの飛行機だった。私は今野編集長の隣に座り、お互いに気ままに話しかけ、映画を見たり寝たりするのを邪魔し合っていたのだが、いつしか私は日本にエンターテイメントとしての卓球映像作品がないことを熱弁していた。素晴らしいプレーがいくらでもあるのに、それを見せるような作品はない、これは卓球文化の損失ではないか、というようなことだ。
憮然として聞いていた今野さんは(地顔だとは思うが)、「じゃ、条太さん作ってみる?来年の全日本で」と言った。取りようによっては「批判するのは簡単だ。自分ならやれるのか」と突きつけられたと取れなくもない台詞だったが、もともと映像作品を作りたいと思っていた私はこれを直ちに真に受けた。そして「やります!夢が叶いました!ありがとうございます。」と今野さんの手を両手で握り締めたのだった。「やめてよ気持ち悪い」と言われたことは言うまでもない。
もともと私は、学生時代から映像作品を作っていたのだ。ところがそれは我ながらクズのようなものばかりであった。日本卓球協会が作った『80年代の卓球』のパロディとして『90年代の卓球』という作品を作って卓球メーカー各社に送ったりした。
そもそも誰も知らない作品のパロディなのだから企画そのものが間違っていたし、その内容も「初心者のふりをして相手を油断させる作戦」「低く構えて台の下をくぐり相手の足を取る戦術」「相手のベンチから財布を盗んでダメージを与える作戦」といった、箸にも棒にもかからないものばかりであった。