先日、電車に乗ったとき、ある二人が話していたのだが、片方の人が駅について降りることになった。その人は別れ際に「会えてよかったです」と言った。
この挨拶に私は非常に違和感を持った。日本語には「会えてよかった」という別れの挨拶はない。しかし誰でも聞いたことはあるはずだ。それは英語圏で作られた映画やドラマの訳としてだ。
というのもこれは、英語のIt was nice to meet youの訳だからなのだ。英語のドラマを見ているうちにいつしかそれが身についてしまったのだろう。フィクションと現実の区別がつかなくなったとでも言おうか。
こういう例はいくらでもあるが、その中で私が最大に違和感を持っているのが「○○は最も○○なもののうちの一つです」という言い方だ。日本語では「最も」と言われれば一番のことだから「のうちの一つです」と言われるといつもガクッとくる。
「伊藤条太はもっとも偉大な卓球コラムニスト」と喜ばせておいて「のうちの一人です」でガクッと落とされる、そんな感じだ。一番が何人いるんだよ?と思ってしまう。「同率一番がたくさんいるんだろう」と思うことにしている。
これは英語のone of the mostの訳なのだ。英語の訳のときは仕方がないと思うが、訳でもないのに「もっとも○○なうちの一つです」なんて言われると、なにかトンチでも仕掛けられているような気がするのは私だけだろうか。