通常、外国選手のインタビューする時には二通りの方法をとる。
まずその選手の母国語と日本語のできる通訳を置く場合。その選手の内面の部分まで質問することができる。ただし、これは通訳する人の力量に頼ることになるし、卓球を知っている人となると適任の人を捜すのは難しい。
もうひとつは、今野が英語でインタビューする場合。これは対象選手の英語の力量と今野の語学力によるのだが、例えば、スウェーデン選手やサムソノフ、ロスコフなどはこれでも大丈夫だ。
ガシアンは英語が相当に話せるし、シーラも大丈夫なのだが、パリでの取材の時には英語ではなく、フランス語にしたかったので、無理を言って、通訳にミッシェル・ブロンデルコーチの奥さん「かおりさん」にお願いした。フランスに長く住む日本人である。
やはり母国語のほうが感情は伝わる。取材は当時二人が所属していたパリ郊外の『ルバロワ卓球クラブ』のクラブハウスで行った。
そして、ガシアンの父の話になった時に、感極まってガシアンもシーラも涙を流しながら当時のことを振り返ったのだ。当然、インタビューするほうももらい泣き……。
彼らのバックグラウンドを知る卓球メディアならではの取材だった。
今でも、ガシアンと会って、食事などをするとその時の話になる。「インタビューを受けて泣いてしまったのはあの時だけだよ」と彼は言う。感動する瞬間は言葉を超えて存在する。
編集者冥利に尽きる経験だ。
e Book 2001年2月号
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