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世界選手権ロッテルダム大会(個人戦)

卓球王国の速報サイトをご覧いただき、ありがとうございました!

今大会も中国が5種目を完全制覇。全種目の決勝が中国勢同士の対戦になりました。補助剤等の疑惑はあるにせよ、その鍛え抜かれた身体能力と攻撃力は圧倒的でした。中国卓球の攻撃力を、これほどまざまざと見せつけられた大会はなかったかもしれません。

また、ロンドン五輪の推薦出場枠が大会に大きな影響をおよぼしました。4年に1度のビッグゲーム・オリンピックは選手にとって大きな大きな存在ですが、世界選手権は五輪の予選会ではないはず。シングルスで負けて五輪の推薦出場枠の獲得が絶望的になり、ダブルスを棄権して帰ってしまった選手がいるという話も聞きました。推薦出場枠を巡る情勢は想像以上にシビアなものでした。

今大会の熱戦の模様は6月21日発売の卓球王国8月号に掲載されます。ヨーロッパらしい、観客が一体となった盛り上がりを見せたロッテルダム大会。その雰囲気を少しでも熱く、お伝えできればと思います。ご期待ください!
●男子シングルス
優勝 張継科(中国)
準優勝 王皓(中国)
3位 馬龍(中国)、ボル(ドイツ)

●女子シングルス
優勝 丁寧(中国)
準優勝 李暁霞(中国)
3位 郭躍(中国)、劉詩ウェン(中国)
●男子ダブルス
優勝 馬龍/許シン(中国)
準優勝 馬琳/陳杞(中国)
3位 王皓/張継科(中国)、鄭栄植/金ミン鉐(韓国)

●女子ダブルス
優勝 郭躍/李暁霞(中国)
準優勝 丁寧/郭炎(中国)
3位 金キョン娥/朴美英(韓国)、姜華君/帖雅娜(香港)

●混合ダブルス
優勝 張超/曹臻(中国)
準優勝 ハオ帥/木子(中国)
3位 岸川聖也/福原愛(日本)、張ユク/姜華君(香港)
 男子シングルス決勝は、経験豊富な王皓が有利という大方の予想を覆し、張継科が初優勝を決めた。

 2003年の第1回世界ジュニア選手権に15歳で出場した張継科。しかし、それから中国代表入りを果たすまでは5年近くかかった。2008年頃からようやく国際大会に出場するようになり、徐々に頭角を現していったが、メンタルのもろさが目立つ選手だった。

 その張継科にとって、大きなターニングポイントになった試合が2試合あるように思う。ひとつは09年全中国運動会・団体決勝ラストの馬琳戦。序盤、馬琳にリードを許しながら、最後に強気の両ハンドドライブで逆転勝ちした。もうひと試合は昨年5月の世界団体選手権・決勝3番のズース戦。1ゲームは落としたが、確実に勝利して4番につなぎ、チームの優勝に貢献した。徐々に、弱気の虫が顔を出さなくなっていった。
 それでも、世界ランキングを4位まで上げていた今年1月のイングランドオープンでさえ、当時世界ランキング138位のコネツニー(チェコ)に金星を献上している。張継科にも勢いはあるが、優勝候補の本命はやはり王皓、対抗馬は馬龍。馬龍との相性の悪さを考えても、張が今大会優勝するとは考えにくかった。

 しかし、コートに現れた張継科は、体つきからして昨年のモスクワ大会とは全く違うものになっていた。もともと細身の体つきだが、体幹ががっしりと太くなり、太ももの筋肉はまるで競輪選手。一方で、上半身の筋肉には無駄がなく、必要最低限。しなやかなムチのようなスイングから、鋭いフォアドライブを連発した。動きの速さもすごいが、スイングスピードの速さが尋常ではない。男子シングルス4回戦では、男子のカットマンでは世界最強を誇る朱世赫(韓国)に対し、ストップはあまり使わずにひたすらフォアドライブの連打で完勝した。
 バックハンドも、台上のチキータから前陣でのバックドライブ、対ツッツキのパワードライブと完成度は非常に高い。フォア前をバックフリックでレシーブして、次に前陣でのバックドライブで押し込み、回り込みフォアドライブで決める。対戦相手はなす術もない。

 ロッテルダム大会閉幕後に発表された2011年6月の世界ランキングで、王皓とともにロンドン五輪の男子シングルスへの推薦出場が決まった張継科。ロッテルダムの勢いをロンドンにつなげ、ビッグタイトルを総なめにするのか。…ただし、優勝を決めた直後に代表チームのウェアを引き裂いたことだけは、後できついお叱りを受けたに違いない。
●男子シングルス決勝
張継科(中国) 10、7、-6、-9、5、12 王皓(中国)

第6ゲーム10-5のチャンピオンシップポイントから10-10まで追いつかれ、逆に11-12とゲームポイントを取り返された張継科。しかし、最後まで強気の攻めを貫いた。13-12の7回目のチャンピオンシップポイントで、ミドルへ来た王皓の3球目裏面ドライブをフォアで回り込んでドライブ。王皓のブロックがネットを越えず、決着!

その場に倒れ込んだ後、張継科がウェアを引きちぎり、咆哮!!!
●男子シングルス決勝
張継科(中国) 10、7、-6、-9 5 王皓(中国)

張継科がゲームカウント3-2とリードした。王皓の裏面フリックにも臆せずに、バックの前陣カウンターを合わせ、時にフォアドライブで果敢に狙う。このまま押し切ることができるか?
●女子ダブルス決勝
郭躍/李暁霞(中国) 8、5、11、8 郭炎/丁寧

女子ダブルス決勝は、郭躍/李暁霞が2大会連続の優勝。国際大会でも長くペアを組み、抜群のコンビネーションを見せた。郭炎/丁寧はプレー領域が重なりやすく、リズムも一定になるのに対し、郭躍/李暁霞は郭躍が前陣、李暁霞が中陣寄りでプレーし、互いの長所がうまくミックスされている。7-0と引き離して奪取した第2ゲームのあと、第3ゲームで8-10とゲームポイントを取られたところから逆転。そのままストレートで勝利した。
男子シングルスの準決勝が終了した後、メインアリーナの2台を使ってユーロキッズの男女決勝が行われた。日本ではホープスの年代か。男女ともルーマニアとトルコの対戦。この年代だと、やはり日本のほうがレベルは高い。

ルーマニアは以前から選手の育成力に定評があるが、トルコにも若手が育ってきているようだ。現代表は中国系の選手が中心だが、出場していたふたりは中国系ではなかった。男子はアンカ選手(写真左)、女子はディオツォヌ選手(写真右)、ともにルーマニアが勝利した。写真中央はトルコのイゲンラ選手。
●男子シングルス準決勝
張継科(中国) -7、5、3、3、9 ボル(ドイツ)

ボルが出足でフリックからのバックドライブ、レシーブからのフォアドライブと積極的なプレーを見せ、4-4から7-5、10-5とリードを広げて第1ゲームを先取したこの試合。しかし、第2ゲームから張継科が得意のバックフリックを連続で決め、第3ゲームからはボルの打ってくるコースを完璧に読んでキレのあるフォアドライブを連発。第4ゲームは張継科2-1のリードから、張継科が8点連取。
中国ベンチの劉国梁監督は応援で喉がかれるのか、何度も水に手をやる。

第5ゲームは出足でボルが4-0とリード。しかし、張継科は振り出したら止まらない両ハンドドライブで、ボルを防戦一方に追いやる。張継科の5点連取で4-5となったところで、ドイツベンチのロスコフ監督がタイムアウト。6-9の場面で劉国梁監督がタイムアウト。張継科は8-9からバックドライブをラケットのエッジに当てて吹っ飛ばし、このまま心理戦に持ち込めば、ボルにもまだチャンスがあるかと思われた。

しかし、張継科は冷静だった。生命線であるバックフリックからの前陣バックブロックでボルのフォアサイドを攻め、10-9でマッチポイント。ここでもバックフリックから、バッククロスへ4球目バックドライブ。これが見事に決まり、張継科がマッチポイントを一発で決めた。メンタルの弱さが指摘され、逆転負けが多かったかつての張継科ではもうなかった。シングルス初出場で、初の決勝進出だ。
●男子シングルス準決勝
王皓(中国) 7、-9、-7、10、7、9 馬龍(中国)

手の内を知り尽くす両者の対戦とあって、お互いに特長を出していくというより、いかに相手の長所を封じるかという抑えられた戦い。それだけに凄みを感じさせる一戦だった。スコアが3点以上離れるシーンはほとんどなかった。
王皓は水谷戦で絶大な威力を発揮した裏面フリックをオールコートに打ち分け、同じようなモーションからストップを混ぜて4球目強打を決める。一方、馬龍はロングサービスを混ぜて王皓の裏面フリックを封じにかかり、打球点を落としたフォアドライブで待ちを外す。馬龍はバックサービスも数本使っていた。随所にハイレベルなラリーは見られたが、派手な打ち合いは少なかった。

その中で、ラリー戦で優位に立ったのは王皓。フォアストレートへのフォアドライブと、バックストレートへの裏面ドライブを効果的に使い、決定率で馬龍を上回った。5ゲーム目、9-10とゲームポイントを取られた場面で、ラリー戦からフォアドライブをねじ込み、6ゲーム目は出足で3-1としてから、このリードを譲らなかった。
レシーブでは、強い横回転に上回転と下回転の変化が加わり、沈んだり止まったりするフリック。前陣ではカウンター強打。中陣では馬龍のフォアドライブにも対抗できるパワードライブ。王皓の裏面はさらに恐ろしい武器になった。しかも世界に同じタイプはいない。この男の対策を立てるのは難しい。