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中国リポート

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 中国卓球ファンの皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
 3月13日にカタール・ドーハから中国・マカオに帰国した中国チームは、現在も練習拠点である北京市に戻ることはできず、マカオで集合訓練を行っている。北京に戻れる日はそう遠くないはずだが、報道陣も選手にはほとんど接触することができない。5月23日に部内対抗戦が行われ、男子は樊振東、女子は王芸迪が優勝しているが、伝わってくる情報は限られている。

 中国リポートも(ますます)休眠状態に陥ってしまうので、渋めの企画を始めたいと思います。中国の主だった省や直轄市ごとに出身選手を取り上げ、その歴史や特徴を紹介する、題して『中国卓球人国記』。最新のニュースを挟みながら、不定期で連載していきます。第1回は中国で最も北に位置する黒龍江省、男子選手編からスタートしましょう……。

中国卓球人国記01「大器を育む黒龍江省-男子編」

◎黒龍江省出身の男子選手
[ハルピン市]孔令輝・王永剛(吉富永剛)
[綏化市]姜海洋・李洋
※不明 王飛・徐瑛彬

 黒龍江省が生んだ最大のスターは、なんと言っても2000年シドニー五輪金メダリスト、1995年世界チャンピオンの孔令輝。「精密機械」と称された正確無比なプレーで数々のビッグタイトルを獲得し、中国でも絶大な人気を誇った。中国のシェークドライブ型を一気に「世界標準」まで引き上げた、卓球史に名を残す偉大なチャンピオンだ。彼を育てた父・孔祥智さんもかつては黒龍江省男子チームでプレーし、引退後は黒龍江省男子チームの監督を長く務めた。

 黒龍江省男子チームは1991年の全中国選手権で、孔令輝、日本で長くプレーして日本国籍も取得した王永剛(93年世界選手権ベスト8/日本名:吉富永剛)、そして中国の「裏面打法・第一世代」である右ペンドライブ型の王飛(現・黒龍江省チーム総監督)らを主軸に男子団体優勝。中国超級リーグの全身である「全国卓球クラブリーグ」では1995年(黒龍江雅豊)・1997年(黒龍江金太陽明星)大会で優勝し、中国卓球クラブ超級リーグがスタートした1999年シーズンにも優勝を果たすなど、一時代を築いた。
 しかし、2005年にスポンサー企業を失ったことで、資金難に陥った男子チームは甲Aリーグへ降格。エースの孔令輝は山東魯能へ移籍し、長い低迷期に入ってしまった。

 そして孔令輝が17年世界選手権個人戦の開幕直前、カジノでの借金スキャンダルが持ち上がり、中国女子チーム監督の座を追われたのはまだ記憶に新しい。劉国梁が中国卓球協会の会長として完全復活した今、孔令輝は一連の権力闘争に巻き込まれ、「割を喰った」という印象が強い。カジノでの金銭問題など、その気になればいくらでも内部で処理できるからだ。

 孔令輝は2020年2月、新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受け、「加油! 武漢」というメッセージをSNS上で発信。久々に元気な姿を見せたが、かつての国民的ヒーローが卓球界の表舞台に返り咲く日は来るのだろうか。

★黒龍江省・男子明星隊 MEN’S HEILONGJIANG ALL STARS
先鋒 徐瑛彬
次鋒 李洋
中堅 王飛
副将 王永剛
大将 孔令輝

 黒龍江省出身の男子選手で、オールスターズを結成してみた。先鋒や次鋒というのは武道の団体戦の試合方式ですが、ご容赦くださいませ。若手のホープ、世界ジュニア代表の徐瑛彬を先鋒として、左シェークドライブ型の李洋(07年アジアジュニア優勝)、右ペンドライブ型の王飛、右ペン表の王永剛、そして右シェークドライブの孔令輝。戦型のレパートリーに富む、なかなか魅力的なチームですね。
  • 95年男子世界チャンピオンの孔令輝。そのプレーは実に美しかった

  • 懐かしい孔令輝の逆横バックサービス。チームメイトの王飛も裏面から出していた

  • 93年世界選手権ベスト8の王永剛。現在は指導者として活躍

  • 現在、黒龍江省チームの総監督を務める王飛。現役時代は細かった

  • 2006年世界ジュニア男子複優勝の右ペン表・姜海洋(右)。左はパートナーの呉ハオ