スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 東京五輪・卓球競技を想定した『備戦東京』エキシビションマッチは、本大会の日程と同様、女子団体が1日早く8月20日に終了。陳夢・孫穎莎・王曼昱がチームを組んだ「女子一団」が4試合で1点も落とさず、オールストレートで優勝を達成した。孫穎莎はついに女子団体・シングルス・混合ダブルスの3冠を獲得した(記録はページ下部に掲載)。

 前々回の中国リポート(2020/08/19)でもお伝えしたが、団体戦は女子二団が仮想・日本、女子三団が仮想・韓国というように、五輪代表候補の「一団」以外は主要なライバルチームと同じプレースタイルの選手で構成されている。その中で、女子一団は準々決勝で仮想・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の女子四団、準決勝で仮想・韓国の女子三団、そして決勝で仮想・日本の女子二団に完勝。初戦だけ孫穎莎/王曼昱のダブルスを起用し、準々決勝からの3試合は、陳夢/王曼昱のダブルスに孫穎莎のシングルス2点起用。プレッシャーのかかる2番シングルスで、孫穎莎に最後の試練を与えた感のあるオーダーだった。

 決勝で仮想・伊藤美誠の孫銘陽に対し、1ゲーム目を落としながらも逆転した孫穎莎は、試合後に「試合前から本当にこの試合はオリンピックの決勝なんだと思って準備をしてきたし、相手のことも本当に日本チームだと思って戦いました」とコメント。「これからの1年、試合で得た教訓をしっかり総括して、困難への準備をしっかり進めていきたい」(孫穎莎)。ハイレベルな部内対抗のエキシビションマッチでの3冠は、国家チームの首脳陣に対しても「満点回答」。シングルスでは対カットの圧倒的な強さを見せ、決勝の王曼昱戦の最終ゲームでは精神的な強さも見せ、団体ではシングルスで確実に得点を叩き出した。

 来年の東京五輪の中国女子代表3名は、今回の『備戦東京』を終えてどう変化したのか。2020年に東京五輪が予定どおり行われていたら、中国女子代表3名は丁寧・劉詩ウェン・陳夢の3人になっていた可能性が高く、一方で2024年にパリ五輪が無事開催できるとしたら、代表3名は『備戦東京』と同じ陳夢・孫穎莎・王曼昱で問題ないだろう(朱雨玲の復活も期待してます)。その狭間、世代交代の真っ直中にある2021年の代表選考は難しい。

 現時点では劉詩ウェンが混合ダブルスと団体、陳夢と孫穎莎がシングルスと団体に出場するのが、中国女子の戦力値としては最も高いようにも思える。すでに2016年リオ五輪を経験し、百戦錬磨の劉詩ウェンに混合ダブルスを託して確実なスタートを切り、シングルスは「対伊藤美誠」で最も分が良い陳夢と、最も勢いのある孫穎莎が出場。団体は19年ジャパンオープン優勝の劉詩ウェン/陳夢のダブルスに、孫穎莎のシングルス2点起用で一気に押し切る。また、孫穎莎を今回の『備戦東京』と同じように3種目にエントリーすれば、五輪史上初の3冠達成の偉業も夢ではない。

 このシナリオは劉詩ウェンの右ひじの回復状況にも左右されるだろう。そして卓球史に名を残す女王・丁寧に、最後の五輪の舞台で有終の美を飾ってほしいという思いもある。世界の卓球界が停滞し、沈黙する中で、時だけが無情に流れてゆく。

●女子団体1回戦
〈女子一団 3−0 女子十団〉

○孫穎莎/王曼昱 7、−7、3、5 斉菲/臧小桐
○陳夢 4、7、3 陳イ
○王曼昱 5、9、−10、7 斉菲

〈女子四団 3−0 女子十一団〉
○張瑞/陳可 −9、4、7、−9、8 呉洋晨/李雅可
○何卓佳 7、9、5 張繽月
○陳可 8、4、8 李雅可

〈女子五団 3−0 女子十二団〉
○李佳イ/劉㬢 7、11、5 冷雨桐/李雨チィ
○胡麗梅 8、−10、6、10 黄頴チィ
○劉㬢 −6、5、7、8 李雨チィ

〈女子七団 3−0 女子十四団〉
○張薔/范思チィ 9、10、−3、−10、8 穆静毓/孫芸禎
○武楊 7、5、2 王添芸
○范思チィ 7、5、11 孫芸禎

〈女子八団 3−0 女子十三団〉
○馮亜蘭/石洵瑶 6、8、−9、7 袁媛/徐奕
○劉ウェイ珊 −4、5、9、−9、6 楊屹韻
○石洵瑶 7、8、5 徐奕

〈女子二団 3−1 女子九団〉
○顧玉ティン/陳幸同 8、6、9 郭雨涵/王暁トン
 孫銘陽 10、−11、−13、−8 クァイ曼○
○陳幸同 5、7、3 王暁トン
○顧玉ティン 9、−5、9、−9、9 クァイ曼

●準々決勝
〈女子一団 3−0 女子四団〉

○陳夢/王曼昱 9、−7、11、8 陳可/張瑞
○孫穎莎 9、6、−6、2 何卓佳
○陳夢 6、10、6 陳可

〈女子三団 3−0 女子五団〉
○銭天一/王芸迪 9、−9、8、−5、11 李佳イ/胡麗梅
 劉斐 7、−7、−4、9、−13 劉㬢○
○王芸迪 4、8、9 胡麗梅
○銭天一 6、8、8 劉㬢

〈女子七団 3−2 女子六団〉
 張薔/武楊 10、−6、−2、−1 木子/楊惠菁○
○范思チィ 11、7、−10、−9、9 車暁㬢
 武楊 −12、−9、−8 楊惠菁○
○范思チィ 9、−5、−6、4、10 木子
○張薔 11、−6、10、11 車暁㬢

〈女子二団 3−1 女子八団〉
○顧玉ティン/陳幸同 6、3、3 馮亜蘭/石洵瑶
 孫銘陽 −14、9、−5、−10 劉ウェイ珊○
○陳幸同 10、6、−4、5 石洵瑶
○孫銘陽 7、9、4 馮亜蘭

●準決勝
〈女子一団 3−0 女子三団〉

○陳夢/王曼昱 −7、5、4、9 王芸迪/銭天一
○孫穎莎 6、3、4 劉斐
○陳夢 5、7、7 銭天一

〈女子二団 3−0 女子七団〉
○陳幸同/顧玉ティン 6、7、5 徐奕/張薔
○孫銘陽 9、−10、−9、6、10 范思チィ
○陳幸同 5、5、2 張薔

●3位決定戦
〈女子三団 3−0 女子七団〉

○王芸迪/銭天一 7、6、4 范思チィ/張薔
○劉斐 5、5、7 徐奕
○王芸迪 6、−5、9、7 范思チィ

●決勝
〈女子一団 3−0 女子二団〉

○陳夢/王曼昱 9、7、4 顧玉ティン/陳幸同
○孫穎莎 −11、4、9、9 孫銘陽
○王曼昱 7、5、9 陳幸同

※写真提供:『ピンパン世界』
  • 孫穎莎、一団のエースとして役割を果たした

  • 「チームがひとつにまとまった」と陳夢。メンバー3人、自撮りでこの笑顔

  • 仮想・石川佳純/平野美宇である女子二団の顧玉ティン(左)/陳幸同。決勝は0−3で敗れる

  • 女子2団のベンチには07年世界2位の郭炎が入った

  • 陳夢(左)/王曼昱は3戦3勝で女子団体を戦い終えた