報告書 小笠原 剛士(早稲田大学監督)

■報告内容総括

本遠征は、関東学生卓球連盟所属の学生を対象とした強化の一環としての海外での強化合宿であり、開催地はベトナムのホーチミン市で、今年が日本ベトナム外交関係樹立40周年ということもあり選出されたと伺っています。

そのような背景のもとで行われた海外での強化合宿ということもあり、参加した各選手の卓球競技力向上もさることながら、国際・文化交流を体験することを通じて人間的な更なる成長のきっかけを掴んでもらうことを目標として取り組みました。

結果、「卓球競技力向上面」では、環境や練習メニューがいつもと異なるという負荷のかかる状況の中、各選手が目的意識とを持って練習に取り組み、選手同士が協力し高め合うことによって非常に質の高い内容にしてくれました。

「国際・文化交流面」では、練習を通じてベトナムの選手達とのコミュニケーションを積極的に取っているところが見受けられました。特に自分に追い込みをかける多球練習の際は、体力的にも厳しい状況で日本、ベトナム両国の選手同士が励ましあって取り組んでいたところが印象的です。また、ホーチミン在住の日本人卓球愛好家との交流は、卓球の話題だけでなく外国文化の理解とグローバルな視点を持つ貴重な機会になったと思います。

今回、ベトナムのコーチ陣からは、技術・練習メニューに加え「日本の選手の卓球に取り組む態度や姿勢を学びたい」と伺いました。上記に記載しましたように、日本の各選手が高い集中力を持って練習に取り組んでいた姿は、ベトナムの選手たちにとってもいい影響があったと考えています。そのような練習への取り組みの支えになっているのは、行動面(10分前行動等)で遠征の最初に決めたことを、各選手が確実に実行してくれたということが大きな要因だったと感じています。

 

本遠征にあたり、現地でのアレンジをしていただいた富岡武侯氏のサポートにより、不自由なく全てのスケジュールを終えることができたこと、また、このような機会を与えていただいた関東学生卓球連盟には大変感謝しています。

最後に私自身も、すばらしいスタッフ陣と選手にめぐまれ、学びの多い貴重な経験をさせていただきましたことに感謝申し上げたいと思います。

(写真左端、小笠原監督)

 

■練習メニュー及び競技力面の考察

n  11月30日

  • 練習メニュー

【午前】

①    フットワーク:フォアハンド・左右・1本‐1本(範囲2/3):10分×2回/1人

②    フットワーク:オールランダム(バックハンドの使用は連続2本まで):10分×2回/1人

③    フットワーク:F‐M‐F‐Bの繰り返し:10分×2回/1人

④    フットワーク:F‐M‐B(BH)→F‐M‐B(回り込みFH)→オール:10分×2回/1人

⑤    ゲーム練習:ベトナム選手との対戦

【午後】

⑥    講習:伊藤さんによる日本選手、ベトナム選手及びコーチ陣に対して

⑦    ドライブ対ドライブ:Fクロス・Bクロス・オール:各7分

⑧    SV+3球:SV(F~M前)→3球目(両ハンドで相手のミドルへ強打)→5球目(ライジングで攻める)

⑨    RV+4球:RV(F前をBH系技術で処理)→4球目(Bサイドへの戻り)→6球目(強打)

【トレーニング】

●  ランニング:400mトラック 男子6周/5周

 

⇒考察

・  練習メニュー②:バックハンドの連続使用は2本までの条件をつけた練習。このような条件をつけた練習を日常で行っているかは分からないが、各選手のプレーと共に意識にも負荷がかかっていると見受けられた。通常のオールランダムフットワークでは両ハンドを使い、ラリーのテンポが一定になる傾向があるが、本練習では、2本目のバックハンドで緩急をつけ全面をフォアハンドで待つ工夫が見受けられた。

・  練習メニュー④:バックへの回り込みの後、フォアサイドに飛びつく場面が多く、その飛びついた後のボールの対応が遅れる傾向が見受けられた。その要因としては、バックへの回り込みから、フォアサイドへの飛びついての打球点が下がっていることが考えられる。回り込んでからの飛びつき時に高い打点でとらえること意識したフットワークの使い方も必要と感じられた。

・  練習メニュー⑦:ドライブ対ドライブでは、ミスの傾向としてラケットの角にあたる「カチンコ」が見受けられた。ラリーが続く中で、ラケットが下から上への軌道になる傾向があり、飛んでくるボールの軌道に合わせたバックスイングの必要性が感じられた。

・  練習メニュー⑨:フォア前をバック系技術(チキータ等)で処理した後の、戻り方に各選手の違いが見受けられた。この練習に限られるのかもしれないが、4球目を自分のボールにして打球できている選手は、レシーブ後の戻りの1歩が大きい傾向があり、そのためには、レシーブへの入り方が大切だと感じられた。

 

n  12月1日

  • 練習メニュー

午前・午後試合

男子:予選リーグ2組から上位4名が決勝トーナメント方式

女子:総当りリーグ戦方式

 

⇒考察

ベトナム選手の特徴

・  体を使い、回転量が多く、力強いボールを打ってくる。

・  チキータの使用が少なく、レシーブではツツキを多く使用してくる。

・  攻撃技術はフォアハンド系で攻めてくる傾向が多い。

・  サーブ、レシーブについて、繊細さは見受けられない。

上記のようにベトナムの選手は、どちらかというと、少し古い卓球をする傾向があり、日本選手は男女共に成績は上回っていたものの下記のような課題があった。

・  コース取りが単調になり、両サイドへの返球が多く、ミドル攻めが少なくなっていた。

・  ラリーでのドライブの引き合いで、相手の威力のあるボールをおさえようとして力んでしまいミスにつながる傾向が見受けられた。

・  3球目など、下回転(ツツキ)を打たされてからの展開が多く、5球目攻撃のスイング位置が上から出しづらそうな様子が見受けられた。

・  ベトナム選手のサーブはショートサーブなら台上で2バウンドしないや、レシーブのストップも同様が多かったが、その次の処理(3球目や4球目)には慣れているため、ハーフロングとなったボールの処理があまくなるとそれを狙われるケースが見受けられた。

 

n  12月2日

  • 練習メニュー

【午前】

①    ドライブ対ドライブ

②    フットワーク:フォアハンド・左右・1本‐1本

③    フットワーク:オールランダム(バックハンドの使用は連続2本まで)

④    フットワーク:F‐M‐F‐Bの繰り返し

⑤    フットワーク:F‐M‐B(BH)→F‐M‐B(回り込みFH)→オール

【午後】 ~多球練習~

⑥    ドライブ(FH・BH)

⑦    ツツキ打ち(フォアハンド・左右1本1本)

⑧    ドライブ対ドライブ(2/3オール)

⑨    ブロック(オール)

⑩    F前ストップ→ツツキ打ち(オール)→強打

⑪    F前ストップ→回り込みドライブ(FH)→飛びつき→ミドルへの返球を強打(FH)

⑫    F前チキータ→Bサイドへの戻り(BH)→回り込みドライブ(FH)→飛びつき→バックへの返球を強打(BH)

(多球練習での1コマ)

⇒考察

・  各選手の疲れもピークに達している状態であったと思うが、午前の練習メニューは1日目とほぼ同様で、いい状態の力配分で取り組めていると見受けられた。

・  午後の多球練習では、各選手共に自分に厳しく追い込む姿勢で取り組んでおり、ベトナムの選手とも励ましあいながらコミュニケーションを取って苦しい練習を乗り越えていた。

 

以上、練習メニュー及び技術面の考察を私なりにさせていただきましたが、大学生になると自分で練習メニューを決めて取り組むことが多くなる中、条件等を与えられた練習に対し、自分で考えて、甘えなく取り組むことの大切さを各選手が気付いてくれたのではないかと思っています。また、このような厳しい練習を、前向きに、明るく取り組んだ今回の選手達に私自身、感動を覚えました。

 

今回参加した各選手が、今回経験した「卓球競技力向上面」と「国際・文化交流面」を基に人間的にも成長し、競技成績をあげていってくれることと共に、各学校で伝えていただき、更なる関東学生のレベル上げていってくれることを期待しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です