現時点で、パリ五輪に向けた選考レースは、世界ランキングは考慮されず、すべての選手がゼロからスタートする。そうなると、男子の張本智和、丹羽孝希、女子の伊藤美誠、石川佳純、平野美宇という五輪メダリストも他の選手と同じスタートラインにつき、2022年の第1回選考会から2024年1月までのおよそ2年間、代表レースを戦っていく。
従来は世界ランキングが選考基準だったが、現在世界ランキングの基になるWTTの大会が少なく、少ないWTTでも世界ランキングの上位者のみの出場のため、選手(特にランキングの低い選手や若手)にとって公平性を欠いている。今後、WTTがすべての選手に対して公平な出場機会を与えるようになった場合はWTTをポイント対象大会に追加する場合があると宮崎強化本部長が説明した。
また新たに2022年からのTリーグでの成績が選手選考にポイントとして加味される。現在、女子最高位の伊藤美誠はTリーグでプレーしていない。Tリーグの試合が選考の対象となると、選手の活動の場所が制限される可能性もある。過去の選手では、岸川聖也、水谷隼、森薗政崇のようにブンデスリーガやロシアリーグで腕を磨き、強くなった選手は男子には多い。
現在のTリーグのレベルは非常に高いが、海外リーグではその練習環境やタフな試合によって鍛えられる部分があったのも事実だ。プロ選手の活動は自由であるべきで、五輪を目指す選手が「Tリーグに縛られる」のは如何なものか。かつTリーグの競技ルールと通常のルールの違いもある。
「中国も1995年から始まった国内の超級リーグによって競争力が高まり、他を寄せ付けないほど強くなった」と宮﨑強化本部長は会見でも説明した。
しかし、中国が盤石の強さを身につけたのはそれだけが理由ではないだろう。それまでのペンホルダー主体のプレースタイルを現代的なシェークハンドスタイルに変えたこともその一因だ。
超級リーグは年間を通して行うリーグではなく、3、4カ月間だけ集中して行うリーグ戦であり、それが国内競争力をどれほど高めたかは定かではない。むしろ、超級リーグによって選手の収入が格段に安定したメリットのほうが大きい。現時点で日本のTリーグとの比較は難しい。
伊藤美誠も、Tリーグに出ないで独自の練習環境で強くなった選手だ。特定のリーグでの成績が選手選考のための獲得ポイントになることは、他の国では例を見ないし、プロ選手の活動は何かに縛られずに自由であるべきだろう。Tリーグは日本のプロ選手の生活を安定させ、活動の場を広げたが、それが選手強化にどれほどプラスになったかを評価するのはまだ早計ではないか。
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