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TSPを忘れる大阪の卓球人はひとりもいない。「ピン球=TSPやった」と阪井理事長

 

1月の大阪での全日本選手権。見事な新型ウイルスの感染対策を見せた

 

「全日本」を完璧にやりきった

大阪卓球協会の底力

 

今年の1月、大会期間中に大阪に緊急事態宣言が発出。その中で、見事に大会運営をやりきり、無事に国内最大イベント「全日本」を終わらせた大阪卓球協会。

 

「吉村洋文・大阪府知事が緊急事態宣言を要請するという時点で、もうやめなあかん、という思いもありました。私たちは主管団体として、選手の人たちに安心、安全を担保しなければいけない。開催決定も本当にギリギリのタイミングでした。日本卓球協会が開催を決めた時でも、『ヨッシャー』というよりも『ホンマにやるんか』という気持ちでした」と大会3日目に阪井一利・ 大阪卓球協会理事長はこう語っていた。

 

しかし、実際に大会を成功させ、阪井理事長は自信がついたと言う。「日本卓球協会の前原正浩副会長、木村興治さん(日本卓球協会顧問)からすぐに電話が入り、感謝の言葉、ねぎらいの言葉をいただいたのもうれしかったですね」と振り返る。

そのことを前原副会長に問うと「いやあ、あの時は本当に大阪卓球協会には感謝しかなかった。涙が出るほどうれしかった。阪井さんと話をしていて涙声になってしまったんだよ。本当に大変だったと思うよ」とその時の心境を語ってくれた。

 

「何より選手のみなさんが喜んでくれたことで、責任を果たせたような気持ちですわ」と阪井理事長。

「今も大阪はひどい状態で、ホカバの予選やインターハイ予選なども延期になっています。大変ですけど、なんとか乗り切っていきたい」。その言葉は沈んではいない。阪井理事長はじめ、大阪卓球協会の人たちは全日本選手権を乗り切り、大会を完遂させた自信があるからだろう。この大阪卓球協会が主管した「全日本選手権」は感染予防を完璧にこなした大会として、今後、モデルケースになっていくだろう。

 

大阪卓球協会は1921年(大正6年)に設立され、日本卓球協会には1931年(昭和6年)に加盟した。平成28年(2016年)にはNPO大阪卓球協会としてよりオープンな組織になっている。江口冨士枝、星野展弥、という世界チャンピオンを輩出し、今では日本生命、ミキハウス、日本ペイントなどの強豪チーム、四天王寺、リベルテ、上宮、大阪桐蔭などの全国で活躍する中・高校が集結している。

 

非常にユニークな男女混成の「大卓リーグ」。

このリーグ戦が登録人口の増加につながった

 

数年前から始まった「大卓(だいたく)リーグ」は非常にユニークな大阪リーグだ。1ダブルス、2シングルスの試合方式、硬式ボールとラージボールに分かれたリーグで、80を越えるピラミッド型を形成する男女混成チームによるリーグ戦を繰り広げる。強い女子選手が男子選手を打ち負かす試合が随所に見られるのも、大卓リーグならではのシーンだ。

この大卓リーグにはスポーツデポや産経新聞が後援し、優勝チームが新聞に載る。このリーグ戦は日本卓球協会に登録した人が参戦でき、大阪のみならず、京都、兵庫、滋賀、和歌山は言うに及ばず、福井、徳島、岡山からも試合に駆けつけるほどの一大リーグ戦に成長している。

このリーグ戦によって日本卓球協会への登録人口も増え、2010年当時は7277人だった登録人口が2018年にはついに1万人を突破した。「日本卓球協会に登録したら大卓リーグに参加できる」というニンジン作戦が見事に成功している。

加えて、大阪の中体連、高体連との協力関係で登録人口を押し上げている。「子どもたちに楽しい大会を提供したい」(阪井)の一心で卓球メーカーのVICTASやニッタクなどのブランドの冠大会を催し、「協会に登録したら出られる」大会を地道に増やしてきた。

 

また大阪には大阪レディース卓球連盟があり、全国レディース大会など様々な大会を開催、レディース選手にとっては「大阪が聖地」とも言える。また、全日本選手権の時にもレディース連盟の多くの方がボランティアとして献身的にサポートした。

 

前述した日本の屋台骨を支える強豪チームと協会とは良好関係で、協会の講習会で企業チームの施設を借りるなど、大阪ならではの垣根のない関係を築き上げているのは「大阪が誇れることですわ」と阪井理事長も胸を張る。「そういうことが卓球界を発展させていく」(阪井)。

大会の組み合わせ会議をやっても大勢集まり、ワイワイとにぎやかだと言う。そしてライバル同士のチームが集っても笑い声の絶えない雰囲気があるという。

 

手袋をしてボールを選手にわたす審判。徹底した感染対策だった

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