日本の卓球愛好者のマニア度偏差値は高い。
用具そのものが勝敗に深く関わるスポーツは多くはない。
記録競技の陸上競技や水泳での、スパイクや厚底シューズ、水着の素材は過去に話題になったことがあるし、スキーの板の素材も競技に大きな影響を与えるだろう。またゴルフのクラブも種類が多く、遠くにボールを飛ばせば有利になる競技だが、飛びすぎない規制を与えている。
ところが卓球は相手と打ち合う対人競技で、飛ばせば良い競技ではない。相手が打ちにくいボールを送ることのほうが飛ばすことよりも重要で、かつコントロールが良くなければ試合では勝てない。
何十種類ものラバーの中から自分に合ったラバーをチョイスし、ラケットも何十種類から選んで、かつラバーとの相性も考えなければいけない。そこにラバーの厚さなどが加わると、果てしないほどの組み合わせの中から自分に最適のラケットとラバーを選ぶことになる。
それを省くためにトップ選手のラバーやラケットを参考にして使う愛好者も多い。同じ用具が売れ、その組み合わせをアマチュア選手も真似ることが多い。ところが、スイングスピードや筋力の違うトップ選手とアマチュアでは感覚は相当ずれているのが現実。そうするとアマチュアと言えども、「自分の用具探し」の旅に出ることになる。
「強い奴は何を使っても強い。弱い奴は何を使っても弱いんじゃ」と言い放つ人がどこにでもいるし、そういう選手はあまり用具には頓着しない。
元全日本チャンピオンで何度も国内を制した人が、ある用具マニアと話す機会があった。熱く語る用具マニア。「○○君、そこまで用具を気にする暇があるなら、もっと練習したほうが強くなるよ」と元チャンピオン。しかし、用具マニアの反論は素早い。「弱いからこそ、用具で少しでも点を取ろうとするんですよ。もともと強い人にはこんな気持はわからない」。二人の話は平行線だった。
才能や努力を用具でカバーできると思う用具マニアと、用具を気にする時間があるなら練習したり、少しでも速くスイングしたり、動けるように鍛えるのが先決だと言い張る元チャンピオン。どちらも間違いではないけれど、相容れない。
言い方を変えれば、弱い人や強い人でも、試合で負けた時に「今日のラバーは調子が悪かった。変えたばかりのラバーで自分に合っていないから負けた」「相手のラバーは初めてで球質が合わなかったけど、慣れれば勝てる」というように、敗因を自分の努力、素質や練習内容ではなく、用具のせいにできることで、自分を責める気持ちを軽くしているとも言える。
卓球はなんてラブリーな競技なんだろう。
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