卓球王国 2024年1月22日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
Tリーグ

挑戦者として戦う「エンちゃん」。中国選手&コーチに聞くTリーグ

昨日行われたTリーグ女子の木下アビエル神奈川対日本ペイントマレッツ戦は、ビクトリーマッチにもつれ込む大熱戦だった。この試合の4番で対戦したのが、木下の袁雪嬌と日本ペイントの馮天薇。昨日の速報でも書いたが、ふたりはともに中国スーパーリーグの黒龍江中州電纜永剛に所属し、スーパーリーグではチームメイトの間柄。重量級の両ハンドドライブで勝ち星を重ねてきた「エンちゃん」こと袁雪嬌だが、試合巧者の馮天薇には完全にサービスを読まれていた。フォア前のサービスは強く切ってレシーブされ、ロングサービスは確実に回り込んで打ち抜かれた。
試合後のミックスゾーンで、馮天薇に「ふたつのリーグを掛け持ちしながらの移動は、やはり疲れますか?」と聞いてみたところ、苦笑いを浮かべながら「累了(疲れました)」と言っていた。「スーパーリーグでずっとプレーしてきたので、戦う相手や試合のリズムが変わり、やはり慣れない面はあります」(馮天薇)。試合中の応援でも、よほど緊迫した場面でなければ、馮天薇は立ち上がって応援することはない。それは決して「ワンマンプレー」ではなく、体力を温存し、試合で勝利をつかむためにベストを尽くしている。彼女は少しでも時間が空いたら、すぐ睡眠を取っていると聞いた。
今日28日はもう中国に移動し、明日の試合でスーパーリーグの第12節を戦う。対戦相手は陳夢と孫穎莎を擁する深圳大学。勝利をつかむのは至難の業だが、黒龍江は馮天薇と袁雪矯のふたりで支えているチームなので、簡単に休むわけにもいかない。

熟練のプレーで袁雪矯との「超級チームメイト対決」を制した馮天薇


袁雪矯にTリーグの印象について尋ねてみると、「Tリーグの雰囲気はスーパーリーグよりも良いですね。全体的なレベル、試合の厳しさという点ではやはりスーパーリーグのほうが上だと思います」とのこと。ただし、彼女はスーパーリーグでプレーしてきた立場から、「上から目線」でTリーグを見ているわけではない。むしろ正反対だ。「Tリーグは世界ランキングが高い選手ばかりだし、私は格下の立場。だから周りの選手には向かっていくという気持ちで戦っているし、雰囲気にも次第に慣れてきて、勝てるようになってきたと思います」(袁雪矯)。この挑戦者精神が、10勝3敗という好成績をもたらしているのだ。

袁雪矯のパワープレーは迫力満点だ


もうひとり、木下アビエル神奈川の劉燕軍監督にも、Tリーグの印象について聞いてみた。穏やかな人柄と優しい眼差しが印象的な劉監督、選手たちを笑わせてリラックスさせる「雰囲気作り」のうまさも持ち合わせている。
「Tリーグは世界的に見ても、中国スーパーリーグに次いでレベルの高いリーグでしょう。そして同じチーム同士で何度も対戦するわけですが、オーダーが少しずつ変わっていたり、試合の内容も変化していくという面白さがありますね」(劉監督)。4チームという限られたチーム数で試合を繰り返していくTリーグ。開幕前は「同じ選手同士の対戦ばかりで、飽きられるのでは?」という不安もあったが、劉監督の言うとおり、様々なオーダーによって対戦カードが変わり、同じ対戦カードでも試合内容がガラリと変わったりする面白さがある。

試合前の整列で木原&長﨑と笑顔を見せる劉監督(左端)。優しいお父さんのような雰囲気


そして劉監督はもうひとつ、印象的なコメントを残していた。「試合の前や合間に行われる歌やダンスなどの演出も良い。会場の雰囲気も良くて、観客のレベルも非常に高いと思います」。「観客のレベルが高い」という言葉には意表を突かれたが、観戦のマナーが良いということだろう。この試合でも、両チームの応援団から「かすみ!かすみ!」「かとみゆ!かとみゆ!」と大声援が送られたが、選手がサービスの構えに入る前にはピタッと止む。地方開催の中国スーパーリーグなどでは、卓球を知らない観客が騒ぎ立て、試合を止めてしまうケースもあるが、日本ではその心配はない。ということで、これからTリーグを見に行く皆さん、安心して選手たちに声援を送ってください。

関連する記事