黄鎮廷(香港)、鄭栄植(韓国)、アポロニア(ポルトガル)という各国の主力級を揃えた「エース軍団」、T.T彩たま。十分に優勝を狙える戦力を揃えながら、唯一にして最大の不安は1番ダブルスだった。試合直前まで読めなかったダブルスに、T.T彩たまの坂本竜介監督は鄭栄植・平野友樹ペアを起用してきた。
このオーダーについて坂本監督は「海外の選手が3人いる中、一番難しいのがダブルス。鄭栄植と黄鎮廷のペア、あるいは世界選手権の混合ダブルスで金メダルをとっている吉村を起用する案もあった」と選手起用の難しさを語った。
「でも、吉村をシングルスで男にするのが自分の仕事でした。このチームで吉村をキャプテンにしたのは、彼が今後東京五輪に向けて必ずパフォーマンスを上げていかなければいけない。東京五輪を目指して勝たなければいけないという中、2番に出るのは非常に大きな意味がある。」(坂本監督)
ダブルスに出た選手は出られない2番に吉村を置き、その得点力に賭けたT.T彩たま。ライバルにして親友の大島と激突した吉村は、1ゲーム目の1−1での最初のサービスを2本連続でサービスミスするなど、緊張を隠せなかった。その後も互いに手の内を知り尽くした相手に対し、サービスが思うように効かず、バック対バックで主導権を握られ、押し切られた。
「両国国技館で初めて卓球の試合をやりましたが、たくさんファンの方が来てくれてすごくうれしかったし、高揚感、熱くなる思いというのを感じて、すごく楽しく試合ができました。大島選手とはずっとライバルでやってきて、久しぶりに試合をやったんですけど、今日は彼の方がすばらしいプレーをしていた。自分が緊張して出足でサービスミスをしたり、それで余計に固まってしまったところがあるので、自分自身はまだまだやりきれていないと感じています」(吉村)。
「これをスタートとして、素晴らしい卓球の試合を届けられるように、素晴らしいパフォーマンスができるようにしたい」と抱負を語った吉村。まだ目指すべきスタイルに迷いを感じるが、16年リオ五輪の直前に世界ランキングを急激に上げ、ゴール前での恐るべき「末脚」で代表権の獲得レースを制した男だ。ほろ苦い開幕戦を、再びの飛躍のきっかけにしたい。
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