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Tリーグ

開幕戦での思い、そして男子チーム戦力比較

10月24日の両国国技館での開幕戦は胸に迫るものがあった。卓球もついにここまで来たかという思いだ。
卓球は今や世界でもっとも加盟国が多いスポーツであり、日本だけでも500万人もの競技人口を持つが、観るスポーツとしては苦難の歴史があった。
1969年には賞金付き個人戦「プロ卓球」が旗揚げされたがすぐに終わっているし、1980年代にはタモリの卓球バッシングのため「卓球ネクラブーム」が襲う悪夢があった。卓球のイメージをリッチなものに変えようとして行われたのは、観客が盛装をしてフランス料理のフルコースを楽しみながら試合を観るという「卓球ディナーショー」だった(そういうリッチかよ)。2000年には「スーパーサーキットSC」が立ち上げられたが集客が伸びずに終わっている。
その卓球が、国技館をほぼ満員にしていた。すり鉢場の会場の中心に一台だけ置かれた卓球台とその頭上から吊り下げられた巨大なTリーグのオブジェを見ながら信じられない思いだった。
そして行われた世界レベルのプレー。今週のオーストリアオープンの男子ダブルスで優勝した大島祐哉(木下マイスター東京)が、リオ五輪銀メダリストの吉村真晴(T.T彩たま)をダイナミックなプレーの連続で下したかと思えば、張本智和が、T.T彩たまのエース、黄鎮廷(ウォン・チュンティン/香港)を遠慮なく粉砕した。

T.T彩たまのエース、黄鎮延を遠慮なく粉砕した張本(木下マイスター東京)


ハイライトは木下マイスター東京の勝利が決まった後の4番で行われた水谷隼と鄭栄植(チョン・ヨンシク/韓国)の試合だ。チームの勝敗が決まっても勝ち点に影響が出るので選手は手を抜けない。試合は随所にスーパープレーを出しつつもつれにもつれた。卓球界随一のイケメンである鄭に観客から「ヨン様~」の声が上がった。いいぞ、もっと言え!最後は3-2で鄭が劇的な逆転勝ちとなった。
 
これがTリーグだ。これが卓球だ。なんと素晴らしいのだろう。
興奮ばかりもしていられないので、男子チームの特徴と戦力の比較をしてみた。
各チームは、外国人選手によって特徴づけられる。木下マイスター東京は、水谷隼、張本智和ら日本代表の上位選手の多くを擁し、今のところ外国人選手はひとりもいない。日本の首都たる東京をチーム名に持つことから、これは純日本人チームだと覚えればよい。
T.T彩たまは、吉村真晴らに、香港、韓国、ポルトガルの3ヶ国から強豪選手を迎えた多国籍チームだ。この国籍の多彩さはチーム名の「彩」の字に重なるから覚えやすい。
岡山リベッツは、森薗政崇らに韓国の超強豪1人を加えている。岡山からもっとも近い外国は韓国だ。だから韓国から入れているのだと覚えればよい(あくまで覚え方の話だ)。
最後の琉球アスティーダは、丹羽孝希を軸に、台湾から強豪3人をごっそり入れている。沖縄からもっとも近い外国は台湾だ。だからこのチームは日台合同チームなのだと覚えればよい(くどいようだが覚え方の話だ)。

卓球界随一のイケメン、鄭栄植(チョン・ヨンシク/T.T彩たま)には客席から「ヨン様~」の声が上がった


各チームのイメージが湧いたところで2018年11月1日発表の世界ランキングに注目して、チームの総合力を比較してみる。
ルール上、絶対に負けない選手が2人いればチームは勝ってしまうので、まずは上位2人の世界ランキングの平均値を比較すると、木下マイスター東京:9位、T.T彩たま:17位、岡山リベッツ:22位、琉球アスティーダ:12位となり、木下マイスター東京と琉球アスティーダの一騎打ちとなる。
一方、1試合には必ず4人以上が出場しなくてはならないから、上位4人の世界ランキングの平均値を比較してみると、木下マイスター東京:19位、T.T彩たま:24位、岡山リベッツ:40位、琉球アスティーダ:50位となり、今度は木下マイスター東京をT.T彩たまが追う形となる。
さらに、下位の選手を出す場合を考慮して、上位5選手の世界ランキングの平均値を比較してみると、木下マイスター東京:65位、T.T彩たま:47位、岡山リベッツ:48位、琉球アスティーダ:88位となり、今度はT.T彩たまと岡山リベッツが浮上してくるのだ。
開幕以来、木下マイスター東京が3連勝しているが、これはたまたまだと考えておくべきだ。勝負の行方は予断を許さない状況にある。今週から始まる第2ラウンド(勝手に命名した)から目が離せないぞ!
 

伊藤条太

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