11月17日に開幕したTリーグ 2020-2021シーズン。2020年内は無観客で開催された3rdシーズンもレギュラーシーズンの半分ほどを消化した。現在の順位を踏まえて、男女それぞれの前半戦を振り返っていく。まずは男子編。
【男子順位(12月24日終了時点)】
1位:琉球アスティーダ(勝ち点36/12勝2敗)
2位:木下マイスター東京(勝ち点21/5勝5敗)
3位:岡山リベッツ(勝ち点14/4勝8敗)
4位:T.T彩たま(勝ち点10/2勝8敗)
完敗スタートも9連勝。琉球、好調の要因は「部活ノリ」?
男子は琉球アスティーダが止まらない。他チームよりも消化試合数が多いこともあるが、2位の木下マイスター東京と勝ち点15の差をつけており、独走と言える快進撃を見せている。
琉球は木下マイスターに、4マッチすべて0-3という、これ以上ない完敗を喫しての開幕だった。しかし2戦目で木下マイスターにリベンジを果たして今シーズン初勝利をあげると、ここから怒濤の9連勝。木下マイスターに敗れて連勝が止まるも、次の試合から再び3連勝を果たし、年内の試合を12勝2敗という成績で終えた。
男子では唯一、ここまで海外選手の出場がない琉球だが、今シーズンより宇田幸矢、戸上隼輔、吉村和弘、平野友樹が加わり、戦力が大幅にアップ。現在、吉村真晴と戸上が8勝3敗で個人成績トップに立ち、全日本王者の宇田も7勝をあげるなど、期待どおりの活躍を見せている。
それに加えて、張一博監督が「ベンチの盛り上がり、気合いが違う。良い雰囲気で戦えている」と語るなど、好調の要因のひとつにチームのムードの良さがあげられる。琉球は7名の日本人選手での戦いとなっているが、そのうち5名(吉村真晴・和弘、平野、有延大夢、戸上)は野田学園中・高のOBという構成。団体戦に燃える野田学園らしいガッツに加えて、琉球にはどこか「部活ノリ」のような雰囲気が漂い、結果を求めながらも明るく、そんなムードが醸成されている。
ズバリと当たる選手起用。光る張監督のマネジメント
そして、選手起用もズバズバと当たる。連勝が9で途切れてから最初の試合となった12月22日の木下マイスターとの試合では、12月5日以来、久しぶりに有延をシングルスで起用。その有延が期待に応えて侯英超を下すと、ビクトリーマッチ(VM)に初めて起用した戸上も侯英超を圧倒して連敗を免れた。翌23日のT.T彩たま戦では前の試合まで5連敗中だったダブルスを平野/有延にスイッチすると、見事に先制点。2人のペアは翌24日の岡山リベッツ戦でも勝利し、3連勝に貢献した。誰かが負けても誰かがカバーする、日替わりでヒーローが現れる。その戦いぶりにはチームの団結が現れており、何より勢いを感じさせる。
選手と監督間の意識の共有もしっかりなされている印象だ。先にもあげた22日の試合で勝利した後、張監督が「連敗だけは避けたかった」と語ったが、有延も同様に「連勝が止まって、今日の試合が大事だと思っていた」とコメント。翌23日の彩たま戦でも勝利したが、吉村真は曽根翔に逆転負けを喫した。すると張監督は「締めるところは締めてくれないと流れが悪くなる。(吉村真は)キャプテンの仕事をしないといけない」と少々厳しいコメントを残した。その言葉に奮起したか、翌日の岡山戦で吉村真はグナナセカランに完勝。連勝にも浮き足立たず、「次の試合にどうつなげるか、どういう流れを作れるかを一番重視している」という、就任2年目の張監督のチームマネジメントも光っている。
不安材料があるとすれば、ここまで4-0での勝利がないことか。12勝のうち5試合はVMまでもつれた末の勝利。「勝負強い」という見方もできるが、負けていてもおかしくはない、紙一重の勝利が多かった。チーム状態が悪化した時にどう戦うか、それとも、そんな状況に追い込まれることなく初優勝まで突っ走るのか、後半戦も琉球からは目が離せない。
王者・木下マイスターは勝率5割で折り返し
昨シーズンまで2連覇の王者・木下マイスターは開幕戦こそ完勝を収めたが、勢いに乗れず5勝5敗。首位の琉球から唯一勝利をあげているが、直接対決では現在2勝3敗と負け越している。シーズン7回の対戦のうちすでに5試合を消化しており、1月に行われる2連戦で一気に差を詰めたいところだ。
個人成績では水谷隼が8勝で吉村真、戸上と並び個人成績トップに立ち、田添健汰とのダブルスでも6勝1敗と大黒柱として奮闘。ドイツ・ブンデスリーガ帰りの新戦力・及川瑞基も6勝をあげて渋い輝きを放っている。
誤算だったのは昨シーズンのMVPであり、白星を量産していた侯英超の不調だろう。ここまで1勝5敗と大きく負け越しており、特に琉球相手には0勝3敗と苦しんでいる。男子ワールドカップ、ITTFファイナル終了後に参戦となった張本智和は12月5日の琉球戦で今季初出場となったが、戸上に逆転負け。その後、腰痛もあって欠場が続き、2試合目の出場となった12月22日の琉球戦が2試合目では再び戸上に敗戦。翌23日の岡山リベッツ戦でようやく今季初勝利をあげた。
木下マイスターは今季より張禹珍も加入したが、新型コロナウイルスの影響もあり、参戦は不透明な状況。張本、侯英超の復調はもちろんだが、ここまで出番のないTリーグ初参戦の13歳・松島輝空が、起爆剤となる活躍を見せる可能性もあるかもしれない。
苦戦が続く岡山、彩たまは後半戦での巻き返しなるか
3位・岡山、4位・彩たまは、ともに負け越しでシーズンを折り返した。上位2チームと比べると、確実にポイントを計算できる選手が少ない状態で、苦しい戦いとなっている。
岡山は上田仁が体調不良から復帰し、森薗政崇とのペアが復活したが、絶大な強さを誇った1stシーズンのように白星量産とはいっていない。5勝3敗の吉田雅己がチームの勝利数トップ。張本と同じく、男子ワールドカップ、ITTFファイナルを経て岡山でのデビューとなった丹羽孝希は5勝5敗で、同じく新戦力の田添響、グナナセカランも勝利が遠く、後半戦での巻き返しに期待したい。
彩たまは昨シーズン最多勝の神巧也が腰痛の影響もあってここまで1勝6敗の成績に終わっており、ベンチを温める試合も多い。その中で松平健太が5勝で勝ち頭。宇田、丹羽、及川などエース格から勝利をあげている。スウェーデン帰りの英田理志は4勝4敗だが、独特のプレーはTリーグでも存在感を放っていた。彩たまにとっての光明は高校生コンビの曽根翔、篠塚大登か。2人のダブルスは5試合に出場して3勝。曽根はシングルス初出場となった12月23日の琉球戦で、吉村真をアグレッシブなプレーで下した。
全日本を挟み、1月20日から再開される後半戦は有観客での開催予定。2月21日の最終戦までの1カ月間で、男子は全19試合を戦う日程となっている。
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