卓球王国 2024年1月22日 発売
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水谷隼・王者帰還「勝つと嫌われるんですよ。 嫌われたくないけどしょうがない」

「負けることよりも自分のプレーが

できないことのほうが怖い。

前は結果を大事にして、

スポーツ選手は勝たなきゃ意味がない

思っていたけど、今は違う」

 

自分が年齢を重ねて、

何もしないとどんどん

落ちていくという危機感があって、

自己管理しなくては

いけないと感じた

 

●ー12月発売号では『水谷隼の逆襲』という特集を組んだけど、リベンジというよりも、圧倒的な勝ちっぷりだった。有言実行というか、充実感はあるでしょ。

水谷 ロシアリーグで前期優勝して、タイペイで優勝して、負けなしだったし、練習もずいぶんしたし、日頃の生活でも卓球のために我慢してきたので、充実感はすごくあります。結果を残したことによって、これからも続けていってさらに上に行くという希望があります。

とにかく限界に挑戦したいですね。去年はケガが多かった。歳も取るし、体の切れが悪いとか、集中力がないと感じる時があります。何年か前はそんなことないと思っていたのに……。自分はいつになっても今と同じプレーができるんだ、イメージどおりのプレーがずっとできるんだと思っていた。

ところが、去年のパリの世界選手権くらいから、技術も体もどんどん自分の理想からかけ離れていく感覚があった。何かおかしいと。自分が年齢を重ねて、何もしないとどんどん落ちていくという危機感があって、自己管理しなくてはいけないと感じたんです。生活をガラッと変えないといけないと思った。

特に、ロシアに行って、それを痛感しました。チームメイトのモンテイロ(ポルトガル)も譚瑞午(クロアチア)も体に問題を抱えていて、入念にストレッチをしている。かわいそうだなと思っていたら、自分もロシアに行った時に最初体が痛くなったり、動きが悪くなったりした。彼らより10歳近く若いのに、このままではダメだと思った。

彼らは飲み物も食べ物も徹底しています。お酒を飲んだところは見たことがないし、普段はジュースさえも飲まずにいつもミネラルウォーター。食事も質素でダイエット生活みたいな感じで、暴飲暴食はしない。間食もしない。ぼくもそれが習慣になって、腹6分目か7分目にして、それで体の切れは良くなるから、もっと体重を落とそうと思う。昔だったらコーラを飲んでたけど、今は口にしない。辛いと言えば辛いけど、誰かが飲んでいると「自分は絶対飲まないぞ」と思う。

 

●ー群れをなさない、ジコチュウ(自己中心)、自分を貫くというのはロシアに行ってから特にそうなっているのかな。

水谷 それは相当あります。それが最近の調子の良さとして表れています。今の生活に20歳くらいで気づいておけば良かったと思う。2、3年経ったらまた違う気持ちになるんでしょうけど、開き直って暴飲暴食したらダメになるんでしょうね。

 

●ーストイック(禁欲的で自分に厳しい)だね。

水谷 今のような生活をしないと勝てないです。今は自然と体が慣れている。上を目指すためには今の生活に慣れて、もっと節制しなきゃいけないし、常に進化しなきゃいけない。それで成績が残せるならもっとやりますよ。これでパワー不足を感じたら筋トレをするかもしれないけど、今は調子が良いからもっと体重を減らしていきます。

 

●ー練習をやらないことに恐怖を感じたり、ストレスにならない?

水谷 なります、なります。そう思うから元旦も練習したんですよ。この間もロシアに行く時に30時間くらいかかって、到着してすぐに練習、という時もあった。昔だったら疲れていたら練習はやらなかった。今だったら遠征で朝着いたら、すぐに練習とかしそうです。練習しないと落ち着かない。不安になる。

今までは調子が悪くなったら休む。疲れたら休む(笑)。自分でも変わったと思います。進化したと言ってくださいよ(笑)。体は今が一番切れます。軽いです。今日は5日ぶりの練習で、「体が重!」と思いました。前は1週間、2週間休んでも平気だったけど、今は2日やらないとちょっとやばいなと感じます。

いつまで卓球ができるんだろうと考えています。若い時には考えなかったけど、故障をしてからそう考えるようになった。今はちょっと練習をやり込むと疲れる。ずっと肩を故障してて、最近はチューブを使ったウォーミングアップやストレッチで痛みが出ないようにしています。前は2カ月に1回くらいひどい痛みがあったけど、最近ケアをするようになって落ち着いてきた。

一度チューブをなくしてやらなかったら、12月上旬にものすごく痛くなって腕が上がらなくなって、もう卓球ができないかもと思いました。ギリギリの状態なんです、今でも。ケアして、やることやって卓球ができなくなるならあきらめがつくけど、ケアしないで満足に卓球ができなくなったら後悔する。

今まではそこまでしなくても結果が出ていたけど、これからそうやって体をケアしていかないといけない年齢。これから1年間見ててください。期待しておいてくださいよ。期待しなきゃいけないんですよ(笑)。

 

●ーロシアに行った時点で自分でも挑戦している。でも、そこまでストイックな生活をしていると思わなかった。シーズンオフで休んだら怖いね。

水谷 休まないですよ。怖いです。ヨーロッパは練習をしないから弱いんだよといつも言っています(笑)。オフがあるから弱いと。試合のある日でも、夜の試合があるからと、午前は1時間くらい練習して「いい練習だった」とか言っているから、「少なすぎるわ!」と言い返す。「これ、練習じゃないし、満足できない。オレはもっと練習したい。ヨーロッパはアジアに比べて練習少ないから」と言います。そういう時には、自分だけで多球練習やトレーニングをしています。

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